祝え!Dies Mirabilisを‼

“Dies Mirabilis”(ディエス・ミラビリス)とは、ラテン語で「奇跡の日」「素晴らしい一日」という意味だそうです。このブログを訪れて下さる皆様一人一人にとって、今日一日が素晴らしい日となりますように!(^^)!

妙な話

この夏は

思いの外、時間ができたもんだから、

一ついろいろな文学作品を、片っ端から

読んでやろうじゃないか

意気込んでみたものの、

 

書店の一角を飾って、

如何にも夏休みの感想文にでも使ってやってくださいまし

とでも言わんばかりの

 

100冊だか200冊だかの

書物の雛壇を見ては、とても全部を買うわけにはいかないな、

半ばあきらめていたものである。

 

かと言って、

一切忘れてしまえるほど、一反の誓いを破ってしまえるほど

軽々しい誓いでもなかったので、

どうしたものかと思案していた。

 

そこへ唐突に思いついたのは、

そうだ、文明の利器を使わぬ手はない。

Youtubeの朗読動画というものがあるではないか、と

今更ながら気づいたわけなのだ。

 

とほぼ同時に思いついたのは、

AmazonKindleというものだった。

当たり前と言えば当たり前のことなのだが、

これまで頭に思い浮かばなかったのが不思議でならない。

 

これを用いない道理はない、

早速Kindleで読み進めることとした。

 

以下は、その読後感想と言おうか、

メモ程度に書き連ねたものだが、

誰かしらの役に立てば、ブログ冥利に尽きるという他はない。

 

※一応断っておくが、こういった話し方は、

 映画を見終わった後に、少しばかりの間、ヒーローやらヒロインやらに

 なり切っている、少なからぬ人々と同様、

 小説の読後に、

 その語り口調に簡単に影響されてしまった輩の言葉遣い

 なのであるから、

 その辺りを加味して、読んでいただければ、

 有難い、というわけなのだ。

 

さて、芥川龍之介「妙な話」であるが、

羅生門とか蜘蛛の糸と言ったような有名どころに比べれば、

マイナーと言うか、

あまり注目されることのない作品になるかもしれないが、

 

私はこういったマイナーなものに触れるのが、

殊のほか好きなので、

惹かれるものがあったのかもしれない。

 

この作品は、

「私」が、旧友の「村上」と喫茶店に入り、村上の妹である「千枝子」が体験したという「妙な話」を、村上の口から聞く、というスタイルを取っている。

 

千枝子は神経衰弱を患っていたらしいが、

それが何によるものかは、定かではない。

 

夫が欧州戦役に駆り出されて、しかも2年間も音沙汰がない、

ということが関係しているのかもしれない。

 

初めの頃、一週間に一度はきっと来ていた手紙も、

途中からぱたりと来なくなってしまった。

 

だが、意外な形で、その理由が知れることとなる。

~それが妙な話なのだ~

 

鎌倉にいる友達に会うため

千枝子が中央停車場(いまの東京駅)に行くと、

どこからともなく赤帽(※荷物運びのスタッフ)がやって来て、

「旦那様はお変わりもございませんか」と聞いて来た。

 

~妙なことに~

千枝子は、面識もない赤帽にそんなことを急に聞かれて、

不思議がることもせずに、

「有難う。ただこの頃はどうなすったのだか、さっぱり御便りが来ないのでね」

答えたというのだ。

 

とまあ、こんな具合に、

「妙」という言葉と、「赤帽」という言葉が、繰り返し繰り返し

出て来る。

 

驚くことに

度々現れる赤帽は、

どこでもドアを持っているのかと思うほど、

あるいは瞬間移動ができるのかといぶかるほど、

遠くヨーロッパの地にいる夫の現況を、

千枝子に伝えるのだ。

 

はて、これはどういうことだろう?

「妙だ」「妙だ」と言葉が続けば続くほど、

この作品には、怪談めいた雰囲気が増してくる。

 

作者の芥川龍之介は、

ただそういったミステリーを語りたいだけなのだろうか。

 

あちらこちらに現れる「赤帽」は、ぜんたい何を表現しているのだろう。

 

おそらくその糸口は、

芥川がクライマックスの4行に周到に取っておいた、この文章に暗示されているのだろう。

 

「村上がここまで話して来た時、新にカッフェへはいって来た、友人らしい三四人が、わたしたちの卓子テーブルへ近づきながら、口々に彼へ挨拶あいさつした。私は立ち上った。
「では僕は失敬しよう。いずれ朝鮮へ帰る前には、もう一度君を訪ねるから。」
 私はカッフェの外へ出ると、思わず長い息をいた。それはちょうど三年以前、千枝子ちえこが二度までも私と、中央停車場に落ち合うべき密会みっかいの約を破った上、永久に貞淑な妻でありたいと云う、簡単な手紙をよこした訳が、今夜始めてわかったからであった。…………

 

 

妙な話

妙な話

 

 

Youtubeの動画では、

以下の二つの朗読動画があった。

 


朗読 芥川龍之介【妙な話】


芥川龍之介「妙な話」石丸絹子朗読 青空文庫名作文学の朗読 朗読カフェ

 

🌟私としては、石丸さんの落ち着いた調子の少し明るい朗読も悪くはないのだけれど、

「妙な話」という幾らかミステリー要素のある作品では、橋爪功さんの朗読の方が好きだなあ(#^^#)